皆さんは、大阪・関西万博(以下、万博)でどのようなことを学びましたか?
私が実際に訪れて感じたのは、万博が単なる展示イベントではなく、「いのちが輝く未来社会のデザイン」を実際に体験できる実験の場であるということです。
特に、私たちの日常生活にも直結する「安全」「環境」「デジタル」「行動設計」に関わる多くの仕組みが、すでに現場で試されていました。
実際に印象に残った具体的な事例を挙げると、次のようなものがあります。
- エスカレーター片側空け文化をなくす
- 完全キャッシュレス決済|デジタルインフラの定着
- 分別の徹底|環境意識を高める仕組み設計
- 給水スポット|持続可能なインフラ設計
この記事では、万博で体験した4つのテーマをもとに、安全・環境・デジタル設計の思想を大学生の視点から分かりやすく解説します。
エスカレーター片側空け文化をなくす

大阪・関西万博では、エスカレーターでの「片側空け文化をなくす」をなくすために警備員による呼びかけが徹底されていました。
「片側空け文化をなくす」とはつまり、「エスカレーターの歩行文化」をなくすことに等しいです。
一見「効率が悪い」と思うかもしれませんが、この呼びかけは単なるマナーではなく、明確な安全設計の思想に基づいています。
- 転倒事故の防止(高齢者・子どもの安全確保)
- 輸送効率の最適化(流れを均一に保つ)
- 機械負荷の軽減(故障リスクの低減)
エスカレーターは、設計段階で「人が立ち止まる前提」で作られています。
片側を空けて歩く行為は、転倒事故やメンテナンス負担増大につながる恐れがあります。
このように、“人の行動を設計・制御する”は、機械・情報工学や人間工学でも重要なテーマです。
完全キャッシュレス決済が示す「デジタル社会の現実」

万博会場内での買い物では、お札や硬貨などの現金は使用できません。
使用できるのは、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など、すべてが「完全キャッシュレス化」されています。
- 盗難リスク軽減
- スムーズなお支払いが可能
- お金の管理がしやすい
これらの利点は、利用者だけでなく運営側にも共通しています。
たとえば、日本円に慣れていない外国人観光客は、クレジットカードをかざすかQRコードを提示するだけ。
外国人スタッフも、金額計算を覚える必要がなく、決済手順さえ理解すればスムーズに対応できます。
つまり、キャッシュレスは「言語を超えるインフラ」として機能しているのです。
こうした仕組みを体験すると、デジタル化がすでに生活の基盤となっている現実を強く感じます。
単なる便利さではなく、社会全体の効率化と多様性への対応を支える技術であることがわかります。
分別の徹底と社会的意味
万博会場内では、環境への配慮とリサイクル促進のために、「3Rステーション」が各所に設置されています。
この3Rステーションは、リサイクルに特化したごみ分別拠点であり、単なる「ごみ箱」ではありません。
3Rとは、環境問題を考える上で重要考え方で次の3つの頭文字を取った言葉です。
- Reduce(リデュース):ごみを減らす
- Reuse(リユース):繰り返し使う
- Recycle(リサイクル):資源として再利用する
実際の会場では、清掃スタッフが常駐し、来場者に分別の声かけを行っていました。
会期中は真夏だったので特に、ペットボトル関連のごみが多かったと思います。
ペットボトルは「ラベル」「キャップ」「本体」を分けて捨てることで、より効率的なリサイクルが可能になります。
普段、何気なく捨てている“ごみ”も、見方を変えれば大切な資源。
まさに「環境教育」と「社会実践」両立した取り組みです。
教科書の外で、環境問題を自分ごととして考えるきっかけになりました。
「給水スポット」に学ぶ持続可能なインフラ設計
万博会場内では、各所に「給水スポット」が設置されていました。
この仕組みは、単なるサービスではなく、持続可能な社会インフラの一部として機能しています。
- プラスチックごみの削減(ペットボトル廃棄を減らす)
- CO₂排出量の低減(輸送・製造のエネルギーを抑える)
- マイボトル利用の習慣化(個人の意識変化)
こうした「給水スポット」は、環境面だけでなく人の行動設計という点でも注目に値します。
ペットボトルを“買う”のではなく、“補給する”という行動を促すことで、自然に環境負荷を減らす習慣が形成されます。
このように、会場内の給水スポットは「環境配慮」「安全設計」「行動心理」の三つを融合させた、持続可能なインフラ設計の好例といえます。
万博の体験を通して、持続可能な社会の実現には、便利さと環境配慮を両立させる設計思想が欠かせないと感じました。
まとめ
『エスカレーター片側空け禁止』は安全を、『分別の徹底』は環境を、『キャッシュレス決済』はデジタル社会の基盤を象徴しています。
これらはすべて、「便利さ」や「効率」だけでなく、人・社会・環境・テクノロジーを長期的に調和させるための社会設計と言えるでしょう。
大学生としてこのような現場を観察することは、教室では得られないリアルな社会理解につながります。
万博をきっかけに、身の回りのインフラや制度にある「設計の意図」を考える視点を持つことこそ、これからの時代に必要な力かもしれません。
次に何かを使うとき、見るとき、「これはなぜこうなっているのだろう?」と一歩深く考えてみることが大事だと思います。

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